作れる。でも、続けなかった椅子。
2026.05.02
イベント
ウッドユウライクカンパニーでは、1989年に創立以来、数多くの椅子を生み出してきました。
その歴史の中には、「作ることはできた」が、「作り続けなかった」椅子たちが存在します。
これらは決して、人気がなかったわけではありません。むしろその独創的な構造や座り心地は高く評価され、多くの方に愛されました。それでも、製作を終了せざるを得なかった理由。それは「かたち」ではなく、「作り方」にありました。
職人の技術と、愛着めぐる家具としての境界線
これらの椅子は、極めて難易度の高い技法を要します。職人にとって、自らの技術を限界まで駆使し、理想を追い求めることは本望です。本来なら、時間や価格を気にせず、持てる技術のすべてを注ぎ込みたい。しかし、一脚に技術を詰め込みすぎれば、それはやがて多くのお客様が手に取れるものではなくなってしまいます。私たちが目指すのは、一部の人のための特別な芸術品ではなく、暮らしの中で「愛着がめぐる」家具であること。日々使い込まれ、手入れされ、世代を超えて愛され続けること、その循環を何よりも大切にしたいと考えました。「つくること」はできても、お届けし続けることができなければ、その循環は途絶えてしまう。その葛藤の末の決断でした。
今、この椅子たちを展示するのは…
今回は、過去の名作3脚を特別に展示し、実際にその座り心地をご体感いただきます。姿の美しさや機能性だけでなく、その背後にある「作り手の苦悩」や「技術の継承」といった物語ごと、手に取っていただけるはずです。
「作れる。でも、続けなかった椅子」
それらは決して過去のものではありません。効率と品質、そして価格のバランスを問い続け、現在のウッドユウライクカンパニーが掲げる「ものづくりの基準」を形作った大切な道標です。
この展示を通して、私たちが今製作している椅子やオーダー家具に込めた想いを、より深く知っていただければ幸いです。
期間:2026年5月9日(土)〜5月31日(日)※水曜定休
場所:ウッドユウライクカンパニーSHOP
期間中は展示する3脚の椅子を限定受注販売いたします。樹種や数に限りがありますので、ご検討のお客様は早めにお声がけください。
今回展示を行う椅子は、創業者・神山公一が「自分たちのオリジナルを形にする」ことを目指し、ウッドユウライクカンパニー設立前の展示会で発表したものです。いずれの椅子も、アンティーク家具に携わっていた時代に実際に見てきた家具をベースに、それらを現代的に再解釈したもの。そして当時、手の届く価格で、本当に良いものを届けたいという思いから生まれました。
以降は、神山と現職人の視点から、その背景や製作についてご紹介しています。専門的な用語や、踏み込んだつくりの話も含まれますが、実物をご覧いただくことで、その意味や価値をより実感していただけるはずです。写真だけでは伝わりきらない、手触りや佇まい、細部の仕事。ぜひ店頭にて、実際にお確かめください。

ホライゾンチェア
「ホライゾン」という名前は、地球の地平線に由来します。この椅子の源流は、イギリスアンティーク。かつての教会椅子などに見られた「横桟の椅子」をベースに再構築しました。背に並ぶ3本の横桟は、すべて異なる幅とアール(曲線)、そして手仕事による「3次元の面取り」で構成。また、脚は部位ごとに太さを変え、それに合わせて背面の曲線を手作業で削り出すなど、徹底した造形美を追求しました。上に向かってわずかに開く後脚のラインは、アンティーク家具の様式を継承したもの。シャープで美しい姿と周囲を通っても足を引っ掛けることのない機能性を両立させています。複雑なテーパー加工を施した脚に合わせ、当然背板の長さは一本ずつ異なります。効率とは対極にある、職人の五感に頼る繊細な仕上げが必要になります。

ラティスチェア
ラティスのデザインベースとなったのは、実在していたイギリスアンティークの椅子。座り心地と造形の完成度に強い確信を持てたある一脚を元にしています。オリジナルのサイズは大ぶりであったため、日本の住環境や体格に合わせて再設計し、コンパクトにまとめました。開発は、元となったアンティークの椅子の実物を入手し、分解・採寸することから始まりました。原寸図を起こし、構造と寸法を一度すべて解きほぐしたうえで、現代の製品として再構築しています。
一見端正なデザインですが、製作はWYLCで一番難度が高い椅子です。
背もたれ全体は曲面(アール)と平面という本来は、矛盾する形状同士を違和感なく繋ぐ必要があります。椅子の背面も部材1本1本が曲線(坊主面)のため、組み上げて仕上げにるは多くの手仕事を要します。前後どの角度から見ても破綻のない造形を成立させるために、高い加工精度が求められます。

ドルフィンチェア
イギリスのクイーンアン様式の椅子をベースに、中央に一本の背板を持つ構成から着想を得てデザインされたモデルです。一見シンプルな構造ですが、四角い部材を繋げるのではなく、組立てからカーブでなだらかに繋げる[さすり仕上げ]と呼ばれる仕様になっています。後脚から笠木、笠木から背板へとねじれながら自然につながるラインを実現するため、見た目の簡潔さに対して非常に多くの手間を要する構造となっています。
デザインとしては新しい方向性を示すモデルである一方、背当たりの硬さなど座り心地の面では課題当時あり、造形と機能のバランスの難しさが表れた試みでもありました。
お問い合わせ
ウッドユウライクカンパニー
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OPEN 11:00〜19:00 水曜定休